「ガンダムって、なんか難しそう…」
「色々ありすぎて、どれから観ればいいかわかんねえよ」
ああ、分かるぜ。 その気持ち、痛いほどによ。 俺だって最初はそうだった。 コロニーだのOZだの、いきなり専門用語のオンパレード。 おまけに主人公は任務と自爆のことしか考えてねえみたいだしな。
特に『新機動戦記ガンダムW』、あんたも今、ちょうど中盤あたりで頭を抱えちゃいないか? 「え、カトルが仲間を殺そうとしてる?」「トレーズ様、失脚!?」「レディ・アンが…嘘だろ…」って。 そう、あのあたりはマジで展開がジェットコースターなんだ。
味方だったはずの奴が敵になり、敵だと思っていた男に妙なシンパシーを感じちまう。 正義の在り処が、まるで蜃気楼みたいに揺らめいて見える。
だがな、断言する。 その「混乱」こそが、『ガンダムW』が他のガンダム作品と一線を画す、最高の魅力なんだ。 今日は、その混沌の先に待つ面白さを、俺の魂を込めて語らせてくれ。 この3つの視点さえ持てば、あんたが今感じている混乱は、極上のエンターテイメントに変わるはずだ。
視点1:誰がための戦いか? 少年たちの不器用すぎる「心の叫び」。
まず、あの5人のガンダムパイロットを思い出してほしい。 ヒイロ、デュオ、トロワ、カトル、五飛。 彼らは完璧な超人じゃない。 オペレーション・メテオっていう無茶苦茶な作戦に放り込まれた、ただの「少年」なんだ。
その脆さが最も顕著に現れたのが、25話「カトルVSヒイロ」だろう。 俺はあの回を初めて観た時、しばらく呆然としちまったよ。 あれだけ仲間想いで、戦いを嫌っていた優しいカトルが、まるで悪魔に乗り移られたかのようにヒイロに牙を剥く。
守るべきコロニーの市民に裏切られ、父親を目の前で失った彼の絶望は、あまりにも深すぎた。
「なんで僕たちはコロニーのために戦っているのに!」
あの叫びは、カトルだけのものじゃない。 彼ら全員が抱えていた疑問だ。 信じていた大義に裏切られた時、少年たちの心は簡単に壊れちまう。 カトルは「悲しみ」を怒りに変えて暴走した。 それは、彼の優しさの裏返しなんだよな。
優しい人間ほど、一度キレると手が付けられないって言うだろ? まさにそれだ。
ヒイロの「お前を殺す」も、リリーナへの「お前を殺す」も、根っこは同じ。 感情表現が極端にヘタクソなだけで、そこには何かしらのメッセージが隠されてる。 トロワが自分の命を盾にしてまでカトルを止めようとしたのも、デュオが「死神」を名乗りながらも誰より命の重さを知っているのも、五飛が「正義」という曖昧なものに固執し続けるのも、全部彼らが未熟で、不器用で、必死にもがきながら自分の戦う意味を探している証拠なんだ。
彼らの行動に一貫性がない?当たり前だ。 戦況は刻一刻と変わる。 昨日信じていたものが、今日にはもう信じられない。 そんな極限状況で、大人びた顔をして戦う少年たちの「心の揺れ」こそ、この物語の核心なんだぜ。
彼らの行動にイライラしたり、共感したり、ハラハラしたり…その感情の揺さぶりを、まずは存分に味わってほしい。
視点2:「エレガント」とは何か? 敵役トレーズ・クシュリナーダの恐るべき美学
さて、少年たちの話をしたなら、次はあの男の話をしないわけにはいかない。 OZの総帥、トレーズ・クシュリナーダ。 普通に考えりゃ、主人公たちの前に立ちはだかる「悪の親玉」のはずだよな。 だが、どうだ? あの男の言動には、奇妙な説得力とカリスマが満ち溢れていやがる。
彼が嫌ったのは「モビルドール」だ。 パイロットのいない、ただの殺戮人形。 ロームフェラ財団が推し進める、この効率的で無人化された戦争のシステムを、彼は「エレガントではない」と一蹴した。
トレーズにとって戦争とは、人が人として、己の意志と誇りを懸けてぶつかり合う神聖な儀式だったのかもしれない。 だから彼は、敵であるガンダムパイロットたちにすら敬意を払う。 彼らが「戦士」だからだ。 ウーフェイとの一騎打ちで、圧倒的な実力差を見せつけながらも、とどめを刺さずに敗北を認めさせたシーンは、まさに彼の美学の真骨頂だった。
レディ・アンを撃ったのも、一見すれば非道な裏切りに見える。 だが、あの瞬間の彼は、OZの未来と、そしておそらくはレディ・アン自身の覚悟を天秤にかけ、非情な決断を下した。 彼の行動原理は、単純な善悪じゃ測れない。 そこにあるのは、彼だけの揺るぎない「美学」なんだ。
このトレーズという男の存在が、『ガンダムW』の物語に圧倒的な深みを与えている。 ロームフェラ財団という、より分かりやすい「悪」が登場したことで、トレーズの立ち位置はさらに複雑になる。 彼は敵なのか? それとも、違う形で世界の行く末を憂う、もう一人の主人公なのか? あんたがトレーズの言動に心を揺さぶられているのなら、それは正常な反応だ。
彼の「エレガント」の意味を考え始めたら、もうこの物語からは抜け出せないぜ。
視点3:究極の矛と盾。 ウィングゼロとリリーナ・ピースクラフトという「答え」。
物語が中盤に差し掛かると、2つの大きな「鍵」が登場する。 1つは、カトルが作り上げてしまった最強のモビルスーツ「ウィングガンダムゼロ」。 そしてもう1つが、完全平和主義を掲げるサンクキングダムの王女「リリーナ・ピースクラフト」だ。
ウィングゼロに搭載された「ゼロシステム」は、パイロットに勝利に至るまでの未来を強制的に見せる。 一見すると最強のシステムだが、その代償は精神の崩壊だ。 ありとあらゆる可能性、つまり仲間の死や自分の敗北までも見せつけられたパイロットは、システムに操られる人形と化してしまう。
一方、リリーナが掲げる「完全平和主義」は、全ての武装を放棄し、対話によって平和を築こうという、あまりにも理想主義的な思想だ。 力こそが全ての世界で、彼女の言葉は無力にしか見えないかもしれない。
だが、この2つは、実は同じ問いを投げかけているんだ。 「人は、戦いの未来をどう乗り越えるべきか」ってな。
ゼロシステムは、力で未来をねじ伏せ、勝利という「答え」を強制する。 リリーナは、力を捨て、対話という果てしないプロセスで「答え」を探そうとする。 ヒイロ・ユイという少年は、この究極の矛と盾の間で、自分なりの答えを見つけ出さなければならない。
ヒイロとリリーナが再会する30話。 あのシーンは、何度見てもグッとくるものがある。 あれだけ心を閉ざしていたヒイロが、リリーナの姿を認めた瞬間に見せた、あの驚きと安堵が入り混じったような表情。 戦うことしか知らなかった少年が、守るべきものを見つけた瞬間だった。
そして、リリーナもまた、ヒイロという存在を通して、自分の理想がただの絵空事ではないと確信する。
これから物語は、この2人を軸に、さらに大きく動き出す。 ゼロシステムを乗りこなし、リリーナの騎士となれるのか。 それとも…。 このハラハラ感こそ、ガンダムW後半戦の醍醐味なんだ。
さあ、もう一度戦場へ戻ろうぜ。
どうだ? 少しは頭の中の霧が晴れてきたか?
『ガンダムW』は、ただのロボットアニメじゃない。 これは、不器用な少年少女たちが、それぞれの正義と理想をぶつけ合いながら、必死に自分の生きる道を探す物語なんだ。 目まぐるしく変わる勢力図は、彼らの心の揺れ動きそのもの。 だから、混乱して当然なんだよ。
この記事を読んで、少しでも「なるほどな」と思ってくれたなら、もう一度、25話から観返してみてくれ。 きっと、カトルの悲しみやトレーズの苦悩、そしてヒイロとリリーナの間に流れる特別な空気が、前とは違って見えるはずだ。
戦いはまだ終わっちゃいない。 むしろ、ここからが本番だ。 俺たちも、彼らの戦いの目撃者として、最後までその運命を見届けてやろうじゃないか。
…さて、と。 なんだか急に、押し入れで眠ってるウイングガンダムのプラモが作りたくなってきたぜ。 あんたもだろ?
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