「ガンダムって作品数が多すぎて、どこから観ればいいかわかんねえよ…」
「Zガンダムって、なんか暗い話なんでしょ?」
ああ、聞こえてくるぜ。 あんたたちのそんな声がな。 確かに宇宙世紀は広大だし、Zガンダムがハッピーエンドかと言われりゃ、言葉に詰まる。 俺も昔はそうだった。 ただのロボットアニメだと思って、ザクとグフの違いもおぼつかなかったクチだからな。
だが、断言する。 もしあんたが、誰かの行動が理解できずにイラついたり、どうしようもない現実に胸を締め付けられたことがあるなら、『機動戦士Zガンダム』は必修科目だ。 特に、物語が大きく動く第20話「灼熱の脱出」と第21話「ゼータの鼓動」。
このたった2話に、Zが俺たちの魂を鷲掴みにして離さない理由が、凝縮されてやがるんだ。
今日は酒でも酌み交わすつもりで、俺の話に付き合ってくれ。 データや年表だけの無味乾燥な解説じゃねえ。 俺がこの2話を通して感じた、剥き出しの魂のぶつかり合いについて語らせてくれ。
灼熱の脱出とフォウ・ムラサメという名の閃光
まず語らなきゃならねえのが、フォウ・ムラサメのことだ。
サイコガンダムっていう、あのデカくて禍々しいモビルアーマーに乗って現れた彼女。 ムラサメ研究所の「4番目」の被検体、フォウ。 記憶を操作され、強化人間として戦うことしか許されなかった悲しい女だ。
カミーユは、そんな彼女とニュータイプとして共鳴し、惹かれ合う。 敵同士だってのに、お互いの心の奥底にある孤独を感じ取っちまうんだな。 だが、戦争はそんなセンチメンタルな出会いを許しちゃくれねえ。 フォウは再び戦場に駆り出され、カミーユの前に立ちはだかる。
この20話で描かれるのは、まさに地獄だ。 カミーユを宇宙に帰したくない一心で暴走するフォウと、彼女を救いたいのにどうすることもできないカミーユ。 そして、カミーユに付きまとうベルトーチカの嫉妬が、事態をさらにややこしくする。
見ていて息が詰まるような展開だ。
だが、クライマックスで物語は一気に昇華する。
ティターンズの卑劣な作戦で、宇宙へ上がるためのブースターを失った輸送機アウドムラ。 絶体絶命の状況で、フォウはサイコガンダムでアウドムラを掴み、大気圏を離脱させようとするんだ。
「これで、カミーユは私を忘れない…」
記憶を失う恐怖に怯えながら、彼女は自分の命を燃やしてカミーユの活路を開く。 これは単なる自己犠牲じゃねえ。 強化人間として、ただ利用されるだけの存在だったフォウが、カミーユという「人の善意」に触れたことで、初めて自分の意志で未来を選び取った瞬間なんだ。
彼女の記憶は、結局戻らなかったかもしれねえ。 だが、カミーユの背中を押したあの行動は、間違いなくフォウ・ムラサメ自身の魂の叫びだった。 俺たちはそこに、どうしようもなく人間的な、切なくて美しい輝きを見ちまうんだよ。
アムロとベルトーチカ:これは愛か、それとも依存か
地球での物語は、フォウだけじゃねえ。 もう一つの人間ドラマが、俺たちに重い問いを突きつけてくる。 アムロ・レイとベルトーチカ・イルマの関係だ。
一年戦争の英雄でありながら、7年間も地球に軟禁されて牙を抜かれていたアムロ。 そんな彼の前に現れたのが、ジャーナリストのベルトーチカだ。 彼女はアムロを再起させようと発破をかけるが、そのやり方がどうにも危うい。
「アムロのため」と言いながら、カミーユとフォウの関係に嫉妬し、アムロを自分の側に縛り付けようとする。彼女の行動を見ていると、ふと「これって愛情なのか?」って疑問が湧いてくるんだ。
俺には、彼女の行動が「依存」に見えてならねえ。
戦争で恋人を失ったっていう彼女自身の心の穴を、アムロという存在で埋めようとしているだけなんじゃないか、ってな。 相手の未来や幸せを願うのが「愛情」なら、自分の欠落を埋めるために相手を求めるのは「依存」だ。
そこには決定的な違いがある。
思い出して欲しい。 『ファーストガンダム』のミライ・ヤシマの姿をな。 彼女はブライトを愛しながらも、彼が宇宙で戦うことを理解し、地上で静かに待つことを選んだ。 あれこそが、相手を信じ、尊重する大人の愛情ってもんだろう。
ベルトーチカの行動は、ある意味で非常に人間臭い。 弱くて、わがままで、自分の寂しさを抑えきれない。 だから多くの視聴者から「うざい」なんて言われちまうんだろうな。 だが、俺は彼女を一方的に責める気にはなれねえんだ。
戦争という極限状況で、誰もが聖人君子でいられるわけじゃねえ。 彼女の姿は、俺たちの中にもある弱さやエゴを映し出す鏡なのかもしれねえな。
宇宙へ:カミーユ・ビダン、剥き出しの魂。
フォウの犠牲によって、カミーユは再び宇宙へと上がる。 そして、ここから物語の雰囲気はガラリと変わる。 地球でアムロという先達に出会い、フォウという魂の片割れを失ったカミーユは、まるで別人のように鋭く、そして危うくなっていく。
アーガマに帰還した彼は、仲間であるはずのエマ・シーンにまで激しく噛みつく。 まるで、自分の内側で渦巻く激情をぶつける相手を探しているかのようだ。 地球での過酷な経験が、彼の心を削り、追い詰めていたんだろう。
そんなカミーユの前に現れるのが、幼馴染のファ・ユイリィだ。
心配して駆けつけたファに対し、カミーユは感情を爆発させ、衝動的に抱きしめる。 あのシーンは強烈だったな。 あれは恋愛感情ってだけじゃねえ。 フォウを失った喪失感、戦いの恐怖、そして何より、母親に甘えるような幼児性がごちゃ混ぜになった、彼の精神的な脆さの表れなんだ。
そう、カミーユは常に母親の愛情を求めている。 彼の女性への執着は、その裏返しだ。 だから、姉や母のように接してくるエマには反発し、自分を受け入れてくれるファやフォウには心を許す。 彼の行動原理を理解する上で、この「母親の不在」はとてつもなく重要なキーワードなんだよ。
そして、宇宙は新たな脅威をカミーユに突きつける。 木星帰りの男、パプテマス・シロッコ。 そして、新型モビルスーツ「ガブスレイ」を駆るジェリド・メサ。 もはや単純なMSの性能差だけでは生き残れない、ニュータイプ同士のプレッシャーが渦巻く戦場が、彼を待ち受けている。
剥き出しになったカミーユの魂は、この地獄の宇宙でどこへ向かうのか。 Zガンダムの物語は、ここからさらに加速していくんだ。
Zが問う「本物」の大人とは何か。
どうだ?たった2話の中に、とんでもない密度の人間ドラマが詰まってるのが分かっただろう。
Zガンダムは、単に戦争の悲惨さを描くだけのアニメじゃねえ。 フォウのような悲劇のヒロイン、ベルトーチカのような未熟な人間、そしてカミーユのような壊れかけの魂を通して、「人間とは何か」「大人になるとはどういうことか」を、これでもかと問いかけてくる。
アウドムラの艦長だったハヤト・コバヤシ(そう、あの顎の人は、一年戦争を戦い抜いたホワイトベースのクルーだ)が見せた覚悟。 ブライト・ノアが振るう「修正」という名の鉄拳。 彼らは、戦争の非情さを知る「大人」として、未熟な若者たちを導こうとする。
だが、その「大人」ですら、迷い、苦しむ。 それがZガンダムの世界だ。
完璧な人間なんてどこにもいやしねえ。 誰もが不器用で、間違いを犯しながら、それでも必死に何かを掴もうともがいている。 その姿が、どうしようもなく俺たちの胸を打つんだ。
もしあんたが、最近何かに熱くなれてないと感じるなら、騙されたと思ってZガンダムを観てみてくれ。 特に、この20話と21話は必見だ。 きっと、あんたの心に眠っていた何かが、熱く込み上げてくるはずだから。
そして気づいた時には、模型屋の棚の前で、MGのZガンダムの箱を手に取ってる自分に驚くかもしれねえぜ。 その時は、俺と一緒に語り明かそうじゃねえか。
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